『終物語』「ひたぎランデブー」からみる『戦物語』

『戦物語』を『終物語』収録の「ひたぎランデブー」から読み解いてみようと思う。両作ともに根幹に触れるネタバレはあり。

さて、「ひたぎランデブー」デートの最初の場面では免許を取って暦を驚かせているのだが、その理由は「吸血鬼」であるがためのサポートであるからだ。将来を見据えての彼女の行動は愛おしい。が、この時点ですでに忍野忍阿良々木暦を切っても切り離せないということを彼女自身は考えていたのではないだろうか。

『戦物語』は阿良々木暦戦場ヶ原ひたぎが新婚旅行に行く物語だ。そこにはもちろん忍野忍もいる。この旅行で暦はひたぎに忍を養子にしようということを考えていることを打ち明けようとする。そう考えていたもののカウンターでひたぎにそっくりそのまま返される。私自身このシーンを読んだ瞬間が印象に残りすぎていて忘れられない。個人の感想はさておき、そうやはりひたぎは忍野忍のことを考えているのである。ではいつから?となり、この「ひたぎランデブー」を持ってきた次第である。

思えばこのように「ひたぎランデブー」が『戦物語』に通ずる点があり、その中で特に感じたのは「名前」に関する部分だ。『戦物語』はその道中で誰々と誰々が結婚して名字が変わったらどうなる?で言葉遊びも踏まえて物語が展開されていく。そしてそれはこれまでこの物語シリーズを読んできた読者に向けての一種のファンサービスでもある。この中で戦場ヶ原ひたぎに注目して「名前」について考えてみる。

ここでまた「ひたぎランデブー」に戻り、これは戦場ヶ原ひたぎ阿良々木暦に「ひたぎ」と呼ばれたいがための物語でもある。彼女にとっては名前で呼ばれることが最も恋人らしいことで、でも性格ゆえにストレートには要求できない。なので回りくどいデートを強いていて、それがまた彼女の可愛らしい一面であると思う。この物語からひたぎが「名前」を大切にしていることが伺える。

「ひたぎ」「暦」と呼び合う仲になって大学生を経て『戦物語』での新婚旅行。ついにひとつの家族になり、その名前もひとつになろうとしている。彼女にとってこれは忘れられない一生涯のイベントになったであろう。

と、ここまで書いてきたところで『戦物語』のラストである。この作品でこれまでずっと「名前」について描かれてきたにも関わらず、最後に一家離散そして名前すら失うという事態に陥る。何とも壮大な前振りで、このためのこの物語かと撃ち抜かれた。ファミリーシーズン、初っ端から引き込まれてしまった。また、この状況になったことでまた別作品の考察が進むことになるのだがそれはまた別の話。

ずっと戦場ヶ原ひたぎ阿良々木暦を見続けてきたのだなと。「ひたぎランデブー」はひたぎがひたすら可愛いし、『戦物語』はそんなひたぎが全面に出ていてひたぎ推しとしてはたまらない物語でした。

 

 

頭の中でずっと「名前」に関して『戦物語』を書きたいと思っていたので、やっと何となくそれを形にしました。もっと他にもやりようはあって、コミカライズ版『化物語』とかとの関連性もまた素晴らしい。というかこのコミカライズがひたすら素晴らしい。来年も物語シリーズ新作を読みたいものだ。