ロックロックロック

「私たち、別れましょう。」

彼女はそう告げた。その瞬間、僕は衝撃を受けるかと思いきや意外にもすんなりと受け入れることができた。
もうこの関係はすでに終わりつつあると感じてはいた。だから、彼女の言葉に驚きを感じなかった。
「驚かないのね、さもそうなることがわかっていた表情よ」
彼女もドライな表情を感じ取っていたようだ。所詮、自分たちの関係はそこまでのものだったんだろう。彼女はやはり自分の奥底までは踏み込めなかったのだ。
「あなたから、何か言葉はないの」
思いつく言葉はなかった。それほどまでに、自分の中で腑に落ちてしまっていたから。ただ、返答はしないといけないのだろう、そう思って自分は
「あなたがそうしたいと言うのであれば、そうするしかないのでしょう。あなたは自分を曲げない性格だから」
すると彼女は
「あなたの全てをわかったような目を見ると魅了される。ただそれは、本当のあなたなの?ねぇ、私にだけはさらけ出したよ。本心からあなたのことを見つめたいの」
そう言われてもと自分は戸惑う。本当の自分とはなんなんだろう。彼女は自分のことを本当の自分とは思っていないらしい。確かに自分は相手のことを理解した目線で見ていると思う。それが自分にとって、一番自分でいられるから。だから、彼女が見ている自分は、本当の自分であるのだ。なのに、なぜ彼女はそんなことを言うのだろう。
「私はあなたのことが好きなの。でも、あなたが私を見る目は他の人を見る目と変わらない。どうして私を特別な目で見てくれないの」
あぁ、なるほどそういうことか。自分は返答する。
「私は他の人も美しいと感じた目で見ている。ただ、私のその目は多くの人には受け入れられない。その中で、この学園で、あなただけが私を受け入れてくれた。だから、私には都合が良かった。あなたを恋人にするということが。その理由だけであなたを選んだ」
そこまで言うと、彼女は
「そう、でもそれでも私はあなたにそんな理由で選んで欲しくなかった。だって、私は本気で愛しているのだから。だから、あなたの隣にはいれないと気付いてしまった」
彼女はそう言った。では、この手でこの関係を終わらせよう。
「さようなら」
そう言って立ち去った。自分のスカートが翻る。