Vシリーズ再読を終えて

はじめに

森博嗣が描く、麗しの元令嬢 瀬在丸紅子を主な探偵役に据えた全10冊のミステリィ。紅子(Venico)のVからとって、Vシリーズとされている。全体の特徴として登場するキャラクター同士の掛け合いが魅力的で、しばしば事件のことを忘れてしまうことがある。まずは、軽く登場人物を紹介したのち、各お話について自分の主観から振り返ってみたいと思う。ネタバレのないように気を付けるが、取り方によってはネタバレになってしまう部分があるのかもしれないので、そこに留意されたい。

主な登場人物

 ・瀬在丸 紅子 (せざいまる べにこ)

本シリーズの主な探偵役。超美人であるが、苛烈な性格の持ち主。底が見えない。へっ君という息子がいる。

・保呂草 潤平 (ほろくさ じゅんぺい)

謎多き私立探偵。阿漕荘の住人。当シリーズは彼により記述される。

・小鳥遊 練無 (たかなし ねりな)

女装好きのN大男子医学部生。阿漕荘の住人。少林寺に精通している。れんちゃん。

・香具山 紫子 (かぐやま むらさきこ)

N大生。阿漕荘の住人。関西弁でノリが軽く、彼女なくして軽快な会話は生まれないだろう。しこさん。

 

と主にこの四人がレギュラーメンバーとなって、事件に遭遇していく。他にも、個性的な人物が登場し、上記の四人と軽くじゃれたり、バチバチに火花を散らしたりする。

 

1. 黒猫の三角 Delta in the Darkness

黒猫の三角 (講談社文庫)

黒猫の三角 (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2002/07/16
  • メディア: 文庫
 

記念すべき一冊目は、不可解な法則に沿って起こる連続殺人事件。タイトルの語感的にピンとくる人もいるかもしれない。紅子さんのキャラが定まってないあるいはそのように書いているのか、シリーズ中一番苛烈なものになっている。S&Mシリーズを終えての一冊目なので、まだまだミステリィ要素は強いのかもしれない。読み終えたあとの意見については、真っ二つに分かれそうではある。

 

2. 人形式モナリザ Shape of Things Human

人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

人形式モナリザ Shape of Things Human (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2002/11/15
  • メディア: 文庫
 

瀬在丸紅子と因縁のある刑事、祖父江 七夏(そぶえ ななか)の初登場。今後このふたりの火花散る争いが見どころにもなってくる。ミステリィとしてみると、かなり理解が難しい。この辺は考察がなされているところが多い。

 

3. 月は幽咽のデバイス The Sound Walks When the Moon Talks

月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

月は幽咽のデバイス (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2003/03/14
  • メディア: 文庫
 

オーディオ・ルームで発見される凄惨な死体。現場は密室であった...

これぞ森ミステリィとも呼べる一冊。howもwhyもwhoも、物語であるからこそこういうこともある。紅子さんと祖父江七夏との争いも定番化し始める。

 

4. 夢・出逢い・魔性 You May Die in My Show

夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)

夢・出逢い・魔性 (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2003/07/15
  • メディア: 文庫
 

タイトルが素敵なのでそこだけ聞いたこともある方もいるのではないだろうか。紅子、練無、紫子はクイズ番組に出演することに。そこでもまた事件に巻き込まれる。

夢で逢いましょうのタイトルのように夢が題材として使われている。またそれが事件を動機含めて、考えさせられるようなものになっている。

謎解きに関してはしっかりと条件をつなげていければ、犯人にたどり着くことはできるだろう。しこさんの溌剌としているところがよい。

 

5. 魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

魔剣天翔 Cockpit on Knife Edge (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2003/11/14
  • メディア: 文庫
 

謎多き人物、各務 亜樹良 (かがみ あきら)の初登場。Vシリーズ以外でもかかわってくる。物語は宝剣エンジェル・マヌーヴァをめぐって、巻き起こる事件。この宝剣が今後も幾度となく登場する曲者だ。

本作はアクロバット飛行を描くシーンがあるが、これはスカイ・クロラシリーズと通ずるものがある。本当に楽しく描かれている。

初読時にはトリックに関して解けなかったのが悔しい。また、ラストシーンは再び読み返しても心に響いてくるものがある。

 

6. 恋恋蓮歩の演習 A Sea of Deceits

豪華客船からの人間消失。Deceitの単語の意味とそれが複数形になっているのが良い。

本作は魔剣天翔の続編とも呼べるもので、そこで明かされる内容を知っているととても素晴らしいお話である。本シリーズの中で一番好きな作品だ。

タイトルも恋恋に蓮歩という、絶対に思いつくことができないようなものになっているところも素敵だ。

 

7. 六人の超音波科学者 Six Supersonic Scientists

閉ざされた超音波研究所で巻き起こる殺人事件。

本シリーズの中ではあっさりとした印象を受ける。ある意味スタンダードな作品になっている。

また、この事件には続きがあり意味深に登場してくる纐纈(こうけつ)という名前は後に続いていくようになる。

 

8. 捩れ屋敷の利鈍 The Riddle in Torsional Nest

S&Mシリーズからゲストが登場してくる。その人物のせいで保呂草さんが若干追い込まれ気味になる。

物語としてはまたまたのエンジェル・マヌーヴァを巡った事件。捩れ屋敷のギミックが面白い。

またここからVシリーズ全体に隠されたとある秘密を解くための、ヒントが大きくなってくる。

 

9. 朽ちる散る落ちる Rot off and Drop Away

朽ちる散る落ちる (講談社文庫)

朽ちる散る落ちる (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2005/07/15
  • メディア: 文庫
 

六人の超音波科学者の続編。研究所の地下密室から見つかった死体、そして宇宙密室の謎に瀬在丸紅子が挑む。

先ほど述べたように纐纈氏がカギを握ってくる。作中、練無が纐纈一族とかかわりがあったと描かれているが、これはVシリーズが始まる前に描かれた短編、「気さくなお人形、19歳」(『地球儀のスライス』収録)に詳細がある。読んでいなくても楽しむことはできるが、読むと練無の心情が見えてくる。

 

10. 赤緑黒白 Red Green Black and White

赤緑黒白 (講談社文庫)

赤緑黒白 (講談社文庫)

  • 作者:森 博嗣
  • 発売日: 2005/11/15
  • メディア: 文庫
 

Vシリーズ最終作にして、のちのシリーズの気配が漂い始める。タイトルはシンプルであるが...

謎の部分としては森ミステリィが大炸裂している。どうもごちそうさまです。ラストにはとんでもない爆弾が待ち受けている。

また、作中での練無と紫子の会話が物悲しい。シリーズの終わりを感じさせられた。特に紫子視点に立つと、胸いっぱいで苦しかった。大学生サイドと大人サイドで二分されているとも感じた。

あとはシリーズ全体を通してにおわせていたことについて重大なヒントが最後に得られるが、ここではまだ確定しない。このあとに続く四季シリーズで明らかにされたはずである。まったくどれだけ読ませるんだ...

 

おわりに

読み始めたらあっという間に終わっている。特にVシリーズはキャラの掛け合いが面白いので、そこに悶絶していると読み終わっている。ミステリィを重視している人にとっては物足りないように思われるかもしれない。このあとにも、四季、G、Xシリーズが待ち構えているので、再読も続けていこうと思う。(積読に目を逸らしながら...)

あと初めて書いた記事なので、そのあたりを考慮していただけるとありがたい。今後については、10冊分まとめて書くとつらいとわかったので、小出しにして書くほうが良いのかもしれない。ただこれを書いて満足してこのブログはもう更新されないかもしれない。なにせ飽き性なので...

読書に限らず書いていきたいこともある。(ゲームとか、日常のこととか)まあ気が向いたらやろうかなと。

 

Vシリーズは良いぞ